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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
雪之丞は、涙があふれかけて来た。
「わかります、わかります――まあ、そのときの気持は、どんなでござりましたろうね? して、それからどうなされまして?」
闇太郎は、突然、きょとんとした目つきになって、雪之丞をみつめた。
「それから? それから――その晩から、おれは泥棒になろうと決心したのさ。どうにも、友だちのいのちにゃ代えられねえと思ったのでね――」
彼は、平然として言って退けて、
「おれは内藤新宿に長くうろついていたので、その界隈のことはよく知っていたから、強慾非道な質屋の蔵をすぐに荒してやったわけだ。生れてはじめてって程の大金をつかんで、夜道をかけて、越ガ谷に引返して、さて、翌日から、人参を、山ほど積んで浴びせかけるようにしてやれば、江戸から通しかごの外科も呼んだが、もう手遅れで、弁の奴、二、三日して、死んでしまやがったが――しかし、あいつあ、何もかも知っていやがった――かたじけねえ、貞太郎、だが、悪いことはこれからはしてくれるなよ――って、涙をボロボロ流しやあがったよ。それでも、息を引きとる真際まで、うれしそうに、おれの両手を握りしめていたが――その顔は、今も忘れられねえんだ――」