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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

二

雪之丞は済まぬと思う――申しわけないと思う。が、どのような私情も、恩義も、彼の一徹な復讐心を磨滅させてしまうことは出来ない。

――いいえ、お師匠さまは何もかもゆるしていて下さるのだ。万一、世間の評判なぞに巻き込まれて、一生一願のこの気持をにぶらせもしたら、それこそ、今日が日までの厚恩を忘れたというもの、却って肉を裂きたい程のお腹立ちになるであろう。

と、つぶやいて、かろうじてわれを慰めるときもあった。

七日目の大喜利の前に、鏡台に向っていると、楽屋にぬっとすがたを現した男――

「おや、長崎屋の旦那さま。この程から、かずかずの御恩――さあ、どうぞ、お敷きあそばしまして――」

と、雪之丞、客のために手ずから座布団を押しやった。

二

相変らず、はしッこそうな、キラキラした目付きをした長崎屋、結城縞に、鉄錆いろの短羽織という、がっちりとしたなりで、雪之丞の鏡台近くすわると、

「いやこないだは、いろいろ我儘を申して相すみませなんだ。その後、すぐ見物ながら楽屋をたずねようと思うていたに、さまざまな多用、失礼をしました。ますます人気絶頂お目出たい」

雪之丞は、そらさずに、