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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

広海屋はするどい目つきになって、

「それは、どんなわけなのか?」

「わたくしが伺いましたところでは、あなたさまは、海産物とやらばかりではなく、上方、西国で、沢山にお米を買い蓄めておいでなそうで――」

雪之丞が、相手をみつめると、

「ウム、いかにも――」

と、広海屋は、いくらか得意そうにうなずいて、

「何百万石という米を、実は妙なゆきがかりから、去年この方手に入れたところ、今年の東の凶作――もうしばし持ちこたえていたら、莫大な利得が生まれようとまずたのしみにしている次第だ」

「お武家さまたちの仰せでは、そのお米を、あなたさまが、男なら、一度に江戸にお呼びになり、こちらの米価とやらを、一朝に引き下げておしまいになると、お名前が上下にぱッと輝くばかりか、関東米相場の神さまにもお成りになり、一挙に、江戸一の勢いをお示しになれるに相違ないに、何をためらっているのであろう――やはり、町人と申すものは、目前のことにのみ、心を引かれて、大きな企みが出来ぬと見える――と、まあ、あの方々でござりますから、そんな無遠慮なことも仰せられておりました」

「ふうむ――その方々が、そのように仰せられていたか? ふうむ」