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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
はじめた。
門はあっても、扉もない、出入自在な寺域は、いつか、彼女のあとになった。
――ホウ、ホウ、ホウ!
と、梟が、高く黒い梢で鳴いて、それだけでも淋しい谷中の深更け――あまつさえ、狐が通っているのであろう――
――ケン、ケン、ケンケン!
そんな鳴きごえが、はらわたに沁みとおるように聴えて来るのだ。
けれども、お初は、一向、淋しそうな顔もせず、杜の間の小径をいそぎながら、だんだんに形相を変えていた。
美しいが、怖ろしい目つきだ。そして、唇が、ぐっと引き歪んだ。
――さあ、雪之丞さん、闇の親分、これからおいらは、キビキビと行ってのけるよ。ふ、ふ、黒門町のお初ともあろうものを、あんな助平坊主に預けた程のうすぼんやりが、さぞ見ッともない吼えづらを描くのだろうねえ。
一一
お初は、杜かげ道をいそぎながら、二、三度、小さな咳をしたが、
――ちくしょう! お蔭で風邪まで引いてしまったよ、憎らしいねえ、あいつ等は――何にしても、二日と、あのままにして置けない奴等だ。思いがけなくはたから飛び出して来やがった闇太郎、まず、一ばんに意趣返しをしなけりゃあならないが、早速、手配して在家をさぐらせ、お役人へ密告してやろうかしら? それにしても、あの闇の親分と、雪さんと、どうして一たい知り合っていたのだろう? いくら考えて見ても