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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
どうしても、わしには、この四人の人形をあやつる糸が、三斎の手の中から伸びているものとは考えられない。三斎でないと、して見れば、何ものだろう?
雪之丞の頭の中では、突嗟にこうした懸念が、火花を散らして渦を巻いた。
――まさか、わし程のものの出迎え役を引きうける奴ばら、いかに未熟でも、途中でかごから抜けさせるような能なし猿ばかりではあるまい。が――
と、雪之丞は、いつもの凄まじい沈着を失わずに、臆せぬ口調で、だしぬけにいいかけた。
「かご脇の方々――いずれまで、お連れを願わねばならぬのでござりますか? ちと揺られくたびれましたが――」
しいんと、黙りこくって、答えるものがない。
――相当の心構えだな。
雪之丞は、敵が、挑みに応じて、荒ら立って来るのを望んだ。そこに、彼はたやすく活路を見いだし、左まで精力を費すこと無しに、身の自由を得られることを信じるのだった。
しかし、案外、相手が静粛を保っているので、追っかけて、
「お許しなされずとも、当方より、乗物を捨てまするぞ!」
グッと、身を斜めに、かごに、重みをかけて、今にも、やわ作りの乗物を、踏み抜こうやに見せかけたが、相手は、なおも、応わなかった。