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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
けれども、その儘には差し置けない。
「行くぞう!」
と、右手の一人、グ、グ、グと、荒潮のように、押しつけて来て、
「おうッ!」
と、唸りざま、中段の刀を、からだごと突ッかける。
開いて、空をつかせた雪之丞の、構えが直らぬ間に、もう一人、
「とうッ!」
と、折り敷くように、胴を薙いで来るのを、ジーンと弾き返して、利き腕に、一撃、腕が折れたか、その場に腰をついてしまったのを見向きもせず、突き損じて、のめりかけた奴が、
「えい!」
と、大袈裟に斬って来たのを、肩先一寸で、かわして、
「む」
と、詰めた気合で、心臓に、鉄扇の尖が、真ッ直ぐにはいる。
残された二人、
「やッ!」
「や、やあッ!」
正面と、横合から、合打ちを覚悟のように、斬りかかったが、雪之丞は、その二本の刃が、触れ合わないうちに、どう潜ったか、潜り抜けて、ズン、ガッと、たった二打ち、一人は、後頭部を、一人は背を、打ち割られ、突き破られて、重なり合うように悶絶してしまった。
雪之丞は、しずかに、いつもの微笑の目を、縁側に、さすがに、坐ってもいられず、虚勢を失って、青ざめて、立ち上った平馬に送って、
「門倉さま、まいられるか? まいられねばなりますまい?」