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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

あたしにゃあ目の上の瘤さ――それを知って、あの狐野郎をつかって、あたしをあんな古寺なんぞの穴ぐらへ押し込めるとは、あんまりじゃあないかねえ――だから、今夜、あたしは、わざわざ、同じような、古寺をえらんで、おまえさんをお招き申したのだよ。それも、お礼ごころに、あそこよりか、もっと淋しい、もっと怖ろしい、女犯でさらし物になって、舌を噛んで死んだ坊主や、坊主にだまされて、怨み死にに死んだ女たちの幽霊が、丑満すぎには屹度出て来るというこの寺をさ――ここの須弥壇の下の隠し穴は、女たちを絞め殺して、生き埋にほうり込んだあととかで、そりゃあ、陰気で鬱陶しい所だが、おまえさんほどの美しい男が、そのあだすがたではいって行ったら、御殿女中のしいたけたぼ、切髪のごけさんといった、坊主に生き血を啜られた挙句、くびり殺された女たちの怨霊が、さぞ、うつつを抜かすだろうよ――ふ、ふ、このお初ちゃんほどの女を振りとおした雪さんでも、相手が幽霊じゃあ振り切れまいね。その、真白い頬ぺたを噛み切られたり、くびすじを食い切られたり、からだ中を嘗めまわされて、狂い死にに死んでやったら、幽霊たちがそれこそ大よろこびでござんしょうよ。