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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
さっきから言うとおり、須弥壇の下に、設けの陥穽が、お前さんを待って、口を開けていますからね――なあに、怖いことはない。急に、いのちを取るように、慈悲深く出来ている穴じゃあない――息も出来れば、手足も伸ばせる――お上のお手入れがあったとき、ゴロゴロしていた白骨も、かたづけてしまったから綺麗なものさ。さあ、あたしが、入口まで、連れて行って上げるから、こうおいでなさいよ――ほ、ほ、ほ――こないだの意趣晴しに、じき上の本堂で、ちょいと一口飲って、娑婆というものが、どんなに楽しいかというところを、見せつけて上げましょうね? ふ、ふ、ここにいなさる門倉さん、武術にかけては、おまはんに敵わないかも知れないが、これでなかなか情があって、どこかのお人のように、木仏金仏石ぼとけというのじゃあないのですよ。今夜はひとつ、みっちり仲のいいところを、見せつけて上げますかね――」
お初は、冷たく笑ったが、急に意地悪い悪どさで、
「さあ、おしゃべりはするだけした。雪さん、起って頂戴――御案内をしますから――」
銃口が、ぐっと、雪之丞に、突きつけられる。
無言に立ち上る雪之丞――