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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「は、は、は、その御愁歎は、ごもッともごもッとも」
と、芝居がかりで、三郎兵衛は、あざみ笑って、
「さりながら、聴かれよ、御内儀、あれも敵の片われ、どうも、お言葉にしたがうわけにはなりませぬ」
「でも、一体、あの子を、どうなされて?」
若しや、やはり、たずさえている匕首で、咽喉ぶえを切り割かれてしまったのではないか――と、内儀は、必死の想いでたずねる。
「どうなされたと言って、たった今も言うとおり、通り合せた賽の河原の奪衣婆に、渡してつかわしたほどに、今ごろは小石を積んで、あそんでいるにちがいない」
と、三郎兵衛は、けろりと答える。
「それなら、そなた、手にかけたのでは、ありませぬな?」
「つかみ殺そうとしたなれど、ほしいというて、奪衣婆がねだったゆえ、つい、河岸でくれてやった」
「これ、みなの衆――どうやら、長崎屋どののいうことは、ほんとうらしい。さあ、早う、手わけをして、この人から子供を受け取った人を、さがして来て! どんな礼でもその人にしましょうほどに――」
妻女が足ずりしてわめくさまは、ことわりせめて道理に見えた。
一七
広海屋内儀は、主人と、長崎屋との間柄が、現在どのように悪化していようと、三郎兵衛が今はもう火つけ、人殺しの大罪人となっていようと、また、哀れや宿業の報いるところ、狂人となり果ててしまっていよ