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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「おのれ、何をぬかすぞ! それ、この人殺し、火つけの罪人、早う、お役人を呼んで――」
と、番頭の一人が、手代どもにいうのを、フッと、何か、思い当ったような広海屋、狂奮の中にも、キラリと、狡く目をはたらかせて、
「待った! お役人衆に、このことを、お知らせするのは、まあ、待った!」
「じゃと、申して、みすみす、この科人を――」
「待てと言ったら!」
と、止めて広海屋は、手鉤を持った出入りの鳶に、
「おぬし達、この長崎屋を、くくり上げて、ソッと、土蔵の中へ、入れて置いてほしい」
「でも、お役人のお叱りをうけては――」
「よいと申したら――気が昂ぶっているによって、落ちついてから、わしが、必ず自首させる――さあ、あまり、人目に立たぬうち――」
広海屋はセカセカしくいった。
と、いうのは、長崎屋を、このまま、検察当局の手に渡したなら、長崎以来のもろもろの悪事をべらべらと、しゃべり立てるは必定、それこそ、わが身の上の一大事と、ひそかに監禁して、誰知らぬ間に始末をつける考えが起きたからだ。
鳶の者は、そう聴くと、これは、悧巧な江戸ッ子流――三郎兵衛の側に近づいて、鉢巻を外して、