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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

これからは、たとえ殺されようと、八ツ裂きにされようと、火あぶり、しばり首、はりつけの刑に処せられようと、もはや、自分のためにばかり生きて行く決心――このわたしの、激しい、悲しい、たった一つの望みを、甚太郎、そなたすらもわかってはくれぬのか?」

怨じて、じっと注いで来る、美しき人の目を、相手は、どうそらしていいか、わからぬもののように――

「そうおっしゃられますると、わたくしめは、申しわけなさに、それこそ、首でも吊る外はござりませぬ。そこまでのお言葉なれば、おふくろにいたせ、わたくしは勿論、今後とも、もうくどう御諫言めかしいことは申し上げますまい――」

と、いい切る外はないのであった。

五

浪路は、詫び入る甚太郎の言葉が、耳にはいらぬように、

「いかに、おな子の身は弱いというたとて、どこまでもどこまでも一家、一門のために、牲に生き、牲に死ぬほかはないと言やるのか? 乳母や、そなたまで、わたしを公方のもとに追い戻そうとたくもうとは、何という、頼み甲斐のない――」

と、言いかけて、哀しみの涙か、くやし泣きか、ハラハラと、青白い頬を、湿らすのだった。

甚太郎は、ますます恐縮して、