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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

――おお、何という恐ろしい、女子の執念であるのだろう? まことや、むかし、清姫は、蛇ともなり、口から炎を吐いて、日高川の荒波を渡ったとか――このお方を、このまま、すげなく突き放したならば、あられもなく、夜ふけの道を、さまよい出すに相違ない――お美しい目に、あの奇しい光り、これは、尋常のことではない。

「のう、甚太郎、どうしてくりゃるつもりじゃ? 厭なら、厭と言や――頼みはせぬぞえ」

柳眉は引き釣り、紅唇はゆがんで、生え際の毛が、ざわざわと逆立つようにさえおもわれるのだった。

――詮方ないことだ。では、今夜これから、せめて、もう一度、雪之丞どのをたずね、かくまで焦れあがいておいでの、ありさまなぞ打ち明け、足をはこんで貰うことにしよう。万一、雪之丞どのが拒みもしなば、そのときこそ、たとえ、腕ずくにてでも、ここまで連れてまいる外はない。

甚太郎は、雪之丞の、秘剣秘術を知る由もないゆえ、力立てをしても、浪路との逢瀬をつくってやらずばなるまいと思うのだった。

そこで、決心して――

「わかりました。では、今宵こそ、この甚太郎、雪之丞どのに、どうしてもお目にかかり、是非ともお供をしてまいるでござりましょう――どうぞ、あてにして、おまちなされて下さりませ」