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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
ああ、いとわしい、顎ひげが、少し伸びた顎が、窶れた頬に触れるのだ。
浪路は、わめこうとする――もはや、わが身の上を考えて、じっとしてはいられないのだ。
その口に、かかえた手の、手先を押し当てた五助――
「ええ! おしずまりなさい――どうしても、拙者の望みを叶えてもらわねばならぬ。ど、どうせ、河原者風情に、汚されてしまうみさおだ! 浪路どの、拙者、洒落に、物をいっているのではござらぬぞ」
――わ、う、う、う!
と、出ぬ声を出そうと、あせり切った浪路――
――おのれ、不所存な! 子供のころから、さも小父のようにも物をいいおりながら、畜生道に、堕ちたか、おのれ――
いつか帯の間をワナワナとふるえる手がさぐる。
帯の間には、肌身はなさぬまもり刀――その体温を宿した柄を、ぎゅっとつかみ締めると、もう一度、身をもだえて、
「う、う、う、おはなし――なさらぬと――」
「は、は、は、悪あがきは止めになされ。横山五助、やさしゅうして貰えば、あとでかならず恩がえしはいたしますぞ」
一三
白く、やさしく、しかし、憤怒と嫌悪とにワナワナと震える手に、われを忘れて、短刀の柄を、つかみしめた浪路とも知らず、横山五助、なおも、しつッこく、顎ひげののびた頬を、擦りつけるようにしながら、