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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
赤茶けたあんどんに、お泊り宿――
お泊り宿は名ばかり、小ばくちの宿をやったり、兇状持、お尋ね者なぞの、隠れ家になったりしている、お目こぼれの悪の巣で、お三婆という、新宿の、やり手上りの侘住居だ。
そのいぶせき軒下に、かごが、とんと下りて、
「おまちどおさん」
後棒、先棒、ぎょろりとした目を見交して、冷たく笑った。
パラリと、上げた垂れ――のぞき見た浪路が――
「ここは?」
「ここは、山ノ宿――」
「では、この辺に、大坂下り雪どのの――中村座の雪之丞どのの宿があらばと――たずねてたも――」
浪路が、一生懸命な調子でいう。
「ナニ、雪之丞の? へえ、あの名うて艶事師の? いえ、なに、これが恰度、その、雪之丞さんの、宿屋でごぜえますよ。へ、へ、へ」
先棒が、つかんだ手拭で、ちょいと、額を拭くようにして答えた。
一六
「出なせえよ、ねえさん、さあ、ここが山ノ宿、たずねるお人のお宿――」
と、一人がいって、垂れの中の、白い顔をのぞき込んでいるうちに、後棒が、どんどんと、お三が宿の、入口の雨戸を叩いて、
「ばあさん、お客さまだ――早いとこ、あけてくれ」
ドン、ドン、ドン――と、手ひどいひびきに、中から、まだ、寝ついてはいなかったらしく、