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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
五
浪路は、かごの中から、強い目つきで、闇太郎をみつめたが、大分、気が落ちついて来ているようだった。
「そなたのいやる言葉は、うそのないひびきがあるように思われます――屹度、うけ合ってたもるのう――でも、あまり長う待ってはいられぬような――何となく、もういのちの火がつきかけて来てしまっているように思われてならぬゆえ――」
と、それこそ、消えがての、ともしびよりも果敢なげな風情でいった。
闇太郎は、わざと、笑って見せて、
「冗談いっちゃあいけませんよ。その若さで、いのちの火が消えるのなんのと――そんな、馬鹿なことを――」
と、いって、
「じゃあ、法印、このお人を、一あし先きに、おれのうちへ連れて行っておいちゃあくれめえか――おれの細工場へよ――」
「あい、じゃあ、田圃へ、連れて行くが、おまはん、すぐに、あとから来るかね?」
と、法印は、かよわい女一人をあずかっているのが、心許なげだ――見かけによらぬ気の弱い奴。
「行くとも、すぐ、用をすまして行く。お娘御、狭くッて、きたねえが、あッしのうちで、ゆっくり手足をのべて、おいでなせえ」
かごの垂れを下げて、
「法印、そんなら、人目に立たねえように、たのんだぜ」