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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「もし、そこの休亭から、使いにめえりやしたが、御懇意のお人が、ぜひ、このふみを届けてくれとのことでござんすが――」
「ナニ、休亭のお客からふみだと! よる夜中ごくろうだな――その戸の隙から、ほうり込んで行ってくれ」
闇太郎の、落ちつき払ったこえ――その語韻を聴きすまして、身を忍ばせた雪之丞、いくらか、ホッとする。
――おお、あれなら、もう知っている、さすがは闇さん、立派なものだねえ。
すると、突然、裏手の水口にまわっていた五人ばかりの捕方、肩をそろえて、やくざな戸に、どんと打ッつかると、バタリとはずれた引戸――それをふみこえて、
「闇太郎、御用だ!」
「御用だ!」
と、飛び込んでゆく。
七
ダーッと、踏み込んで行った捕方たち、――それを、肩すかしで、かわしたように、家内から飛び出して来た、黒い人影――
――あ? 闇の親分だ。
雪之丞、じっとみつめて、立木の蔭でつぶやいたが、
――あれ、また、まつわる捕手――いっそ、一思いに、匕首で、斬っぱらってしまったら、よさそうなものなのに――
雪之丞が、間遠に見て、歯を噛んでいるうちに、又もや、斬り抜けた闇太郎、結句、またも、多勢にかこまれて、身じろぎに、不自由を覚えて来た容子――