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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

以て一連のこの計画が、並ならぬ毛利方の外交的成功として、それに所属する陣営に祝されているのは無理もない。

「思えば、ここは大危機だ。正に織田勝つか、毛利勝つかの平井山は、その分水嶺」

彼の心はそそけ立った。その一責任を自分にも感じて――。

駒を返して、ふたたび秀吉にまみえ、前線諸陣地を一巡して気づいた兵の配備上のことや、また重要な一策を献言した。

「先頃からお味方は、三木城に通じる東西の二道を初め、播磨灘の沿岸から三木に入る街道をも封鎖して、敵の糧道を断っておりますが、今日、つらつら敵の士気をながめ、地理を按じてみますに、これはまだ少しも敵中の士気にこたえていないようです。考え直さなければなりますまい」

秀吉の持久長攻策の眼目はそこにあるので、秀吉はそう聞くと甚だ驚いた。眼をみはって、

「なぜだ。なぜ糧道の遮断が無意味だというか」と、急きこんで更に――

「つい後の月にも、毛利家の糧船二百余艘が魚住の岸に寄って、三木へそれを搬入せんとしたのを断乎追いしりぞけ、そのほかの道でも、密輸の糧米をたえず抑えている。ほとんど、水も漏らさぬほど完封してあるのに、これが敵兵に何の痛手もないとあっては一大事じゃが」