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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
どんな事でも平気でやッつけて、幾らでも銭になりゃ、そいつを掴んで、方々の部屋をごろついて歩いた。なんしろ、弁公の奴が、ちっとも顔負けのしねえ男なので、とうとう二人で、吉原のチョンチョン格子の牛太郎にまでなったこともあるんだ。ところが、何しろ二人とも、野放図もない我儘者だったから、何処にも永く尻が落着く筈がねえ。仕舞には、流れ流れて奥州街道を、越ガ谷の方まで、見世物の中にまじって落ちて行きさえしたのだ。その越ガ谷で、えらい目に遇うことになったのだ」
闇太郎の口元には、苦いくるしい思い出を、まぎらそうとするような笑いが浮かんだ。
「その越ガ谷で、見世物師同士がぶっつかって、思いがけなく飛んだ修羅場が始まったのさ。両方何十人という若い奴等が、あいつ等の喧嘩のことだから、生命知らずに切っつはっつだ。その時、間抜けな弁公の奴、鈍刀で、横っ腹を突かれたのがもとで、身動きも出来ねえことになる。喧嘩は仲直りで済んだが、一番手傷の重い弁公は、もう見世物に、くッついて、旅から旅を歩くわけにゃあ、いかねえ。拠なくこのおれも、あいつと一緒に越ガ谷に、居残ることになったのだ。