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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「折角たずねてくれたこと、茶も出さねえで失礼だが、お初と来ると、先方も勾配の早い奴――早速、穴をさぐって、ひとつ何とかとっちめて置いてやろう――」

闇太郎は、そう言うと、立ち上って、八反の平ぐけを、ぐっと引きしめて、腹巻の間に、匕首をひそめて、豆しぼりの手拭を、ビュウと振ってしごいたが、

「じゃあ、そこまで、一緒に出ようか――なあに、おれのカンは、はずれッ子はねえ。必ず、今夜中に、あの色気違えをとッつかめえるよ」

闇太郎は、辻かごのいるところまで、雪之丞を送って来て、

「そんなら、別れるが――安心して吉左右を待ちなせえよ」

「どうぞ、お願いいたします」

雪之丞は、やっと、ホッとして、かごに揺られて、旅宿の方へ――

闇太郎、例の吉原かぶり、ふところ手で、

――人は見かけによらねえものというが、女がたの雪之丞、そこまでの大望をいだいていたのかなあ――何か一癖ある奴とは思ったが――何にしても、変った奴だ。おらあ、あいつのためなら、死んでやりてえような気持までするんだ。だが、お初ッて奴も、いい加減な茶人だなあ――見す見す泥棒と見ぬかれているのを知りながら、こわおもてで口説くなんて、ちっとばかしだらしがねえ。