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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
やけに、笑うお初の顔いろには、思い入った、沈痛なものが漲っている。
闇太郎は、苦っぽく笑って、
「あの人も、お前さんほどの気性ものに、そこまで思い込まれたのは仕合せといってもいいだろうが、しかし、何しろ大願のあるからだ――今のところ、色恋に心を分けるひまのないのも当り前だ。だから、せめて、あの人が望みを果す日まで、何もかも待ってくれることにして貰えれば――」
「ほ、ほ、ほ――親分にもないお言葉です」
と、お初は、捨て鉢に、
「親分、お前さんだって、このあたしが、どんな身の上か、よく御存知のはずでしょう。高い声では言われないが、明日にも運が傾けば、どんな暴しが吹いて来て、このいのちを、吹き散らしてしまうか知れないのです。あたしの一日は、世間の女の人達の、一年にも向っている――その辺のことは、親分も、御自分で、よーく知っていなさる筈ではありませんか?」
二三
お初は、もう、闇太郎の言葉は、耳に入れたくないという風で、
「ねえ、親分、このことに就いては、黙って下さいよ。あたしを、とんだ色きちがいと笑ってくれてもいいから――そして、暫くのことだから、まあ、機嫌よく一口飲んで、世間ばなしでもして行って下さいな。