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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

琉球朱のしっぽく台に、料理がはこばれ、めぐる杯と一緒に、お座つきは、太鼓がはいって、

「執着」のひとふし――

それが、済むと、浮いた浮いたと、太鼓持が、結城つむぎのじんじんばしょり、甲斐絹のパッチの辷りもよく、手ぶり足ぶみおもしろく、踊り抜いて、歓笑湧くがごときところへ、広海屋の馴染の、玉葉太夫というのが、たいまいの笄、蒔絵の櫛も重そうに、孔雀の尾のうちかけを羽織って、しずかに現れる。

「イヨ、弁才天女の御来迎!」

何やかやと、あり来たりの掛ごえがあって、酒興はいよいよたけなわになるのであった。

明日は、大切な舞台を控えている雪之丞、いい程にして、戻ろうと、杯の水を切って、

「逆にて御無礼ではござりますが――」

と、広海屋に献した。そのときだった。

階下で、何やら女たちのかしましい歓迎のこえが聴えたが、その中に、ふッと、

「これは、まあ、ようこそ! あちらさまは、もうとうにおいでになっております。さあ、どうぞ――」

と、いうような言葉がまじるのを聴くと、広海屋は、屹と、鋭い目つきをして、眉根をぐっと引き寄せた。

そして、雪之丞にちらと目まぜをして、

「ほう! 長崎屋が見えたらしいぞ。