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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
法印、もっともらしくいいながら、いつか目が据わり、からだの中心が、取れなくなって、前に傾くと見れば、つんのめりそうになり、うしろに反ると見ると、ひっくりかえりそうになる。
何しろ、独酌で、飲んでいるうちに、御禁制の窖に、お初に酌をさせに下りて来ようと思い立つまで、ほのぼのとしてしまっていた彼だ。その上、差し向かいになってから、飲みも飲んだことであるから、どんな人間でも、用心も、根性も、すっかり失われてしまうのも無理がない。
やがてのことに、なみなみとはいった茶碗をつかんだなりで、片肱を突いて、横に伸びて、
「もういけねエ――お初つぁん、おいらあ、もういけねえ――」
「何だねえ――まだ、白丁に半分も残っているじゃあないか――」
「駄目だよ――今度はおまはんの番だ――」
と、湯呑を、突きつけようとして、その湯呑を、意気地なく手から取り落してしまう。
茶碗は落ちて、酒が古だたみをだらしなく湿らす。
じーッと、見ているお初、いつか、真顔になって、下唇をぐっと噛みしめている。
――お坊さん、とうとうまいってしまったね、ゆっくりお寝よ。
落ちた茶碗を取り上げて、手酌で一杯。