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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

どうぞ、こちらでも、御同勢を集めて置いて下さいましな――いつ、何どきでも押し出せるようにね――わかりました?」

お初は、そういって、猪口のしずくを切ってカチリと膳に伏せる。

「その方は、承知いたしたが、もう帰られるか?」

まだまだ未練がましい平馬に、ニッコリと、微笑だけのこして、お初は立ち上った。

「かごでも――」

と、玄関で、言ったが、

「いいえ、かえって、歩く方が勝手ですから――」

お初は、道場の門外へ出て、それからは、もう何も考えずに、小走りに夜道をいそぐ。

彼女はしかし、このまま、まっすぐに黒門町へ帰れはしないからだ――すでに、谷中鉄心庵で、島抜け法印を寝こかしてくれたことが、ばれてしまっているかも知れない。

――あの坊主、あしたまで、ぐうぐう眠っていてくれればいいが、あいつだって、悪党だ――ことによったら、もう目をさまして、騒ぎ出しているかも知れぬ。そうすれば、闇太郎のことだもの、おいらのからだを、ほうり出して置くはずがない。

どこへ行ったものか――と、考えるまでも無く、お初は、所々に隠れ家を持っている。

彼女の足の爪先は、池の端、錦袋円の裏路地に、