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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

と、署名した文が届けられていた。今夜、急用で打合せしたいことがあるゆえ、遅く、旅宿をたずねる――と、いう意味のことを、知らせていた。

――田圃――

と、いえば、浅草の闇太郎に相違なかった。

が、その処を読みおわらないうちに、男衆がはいって来て、膝を突くと、

「親方、広海屋さんから――と、いって、お迎えのかごが待っておりますが――」

広海屋と聴いて、雪之丞の心は緊張した。その後、長崎屋との争論は、どんなことになったであろう――自分が投げてやった、毒菓子に、ガブリとむしゃぶりついた二人の男の成りゆきが聴きたかった。

闇太郎の文もあり、いつもならそう手軽くうけ引きはしなかったのだろうに。

「広海屋さんは、どこにおいでなのだろう?」

「柳ばしの、ろ半で、おまちなそうでございます」

三

それなら、ろ半とやらで、ほんの短い間、広海屋と逢って、それから、闇太郎の、急用というのを聴くために、宿へ戻って遅くはないであろう――と、雪之丞は、そんな風に考えたので、舞台化粧をザッと落して、着類をあらためると、迎えのかごというのに、躊躇なく身を委せた。

かごと一緒に、使いに来た男は、小柄な、はしっこそうな若者だった。