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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

草鞋が土を踏んでいるひびきではない。

――おや、橋を渡っているが――それも、長い橋を――

雪之丞は、いぶかしさを感じた。

耳をすまして、少し考え込んだが、

「かご屋さん、これは、柳ばしへゆくのではないの?」

「へえ、それが模様換えになったので――」

と、かご脇に引き添って、駆けていた若ものが、何でも無げに答えた。

「模様換えというと――」

雪之丞、かすかな不安を覚えたものの、

「わたしは、柳ばしのろ半とか、聴いていたが――」

「いいえ、柳ばしのろ半の出店が、深川にありますんでね――へえ」

かごは、いつか、橋を渡り切って、かまわず、急いで行く。

川風が、荒っぽく、垂れの外に吹きすぎるのをきって走ってゆく。

やがて、傾斜を下りて、人気はなれたあたりへ出たらしかった。

すると、とある曲り角を、曲ったと思うと、そこで、二、三人の足音が、乗物にまつわって来た。

――はて?

はじめて、雪之丞は、一種の殺気が、自分を押しつつむのを感じた。

――早まったかな? わしには、敵がないわけではなかった。

敵を敵をと、狙う身、あべこべに狙うものがあることをとかく、忘れがちになるのは当然だった。