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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

鉄扇一本で、おのおの方も、寝ませて上げますから――

ニッコリ笑って、誘うように、からだ中に隙を見せたが、相手の五人武者――いずれも、敵を見る目ぐらいは持っているし、現在、軽はずみに、突ッかかって行った間柄助次郎の、失敗を目に見たことだから、先を切ッて、飛びかかってゆくものもない。

平馬は、わざと、平然たる態度をよそおおうとして、くわえていた銀煙管の吸口を、噛みつぶすばかり、ギリギリと、噛んで、雪之丞の退路を絶とうと、背後に押し並ばせた、おのが門弟どもに、あたるように、

「貴さまたち、何を愚図愚図、それ、引ッ包んで、かまわぬ、斬れ!」

これは、生兵法中の生兵法の手合、その中の瘋癲者が、師匠に煽られて、

「えい!」

と、だしぬけに斜めうしろから、斬りつけて来た。

一一

背後から、閃き落ちる白刃――鉄壁みじんと、斬りつけて来るのを、振向きもせず、体を少しばかり捻った雪之丞、相手がかわされて、空を斬りながら、つンのめって、蔽いかぶさるようになった所を、その若者の袴腰に左手をかけて、軽く突くと、

「アッ!」

と、あわてふためいた叫びを上げて、たたらを踏んで、前に並んだ五人武者の方へ、よろけて行く。