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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

と、同時に、あとの四人、いずれも、抜き連れた刀に、赤黒い灯火を宿させて、間柄助次郎の手にあまったら、ほんとうに、即座に斬り伏せようという気勢――もはや、弄び嘲けって悪謔をほしいままにしようなぞという、いたずら気は毛頭なかった。

――大敵だ! なるほど、門倉や間柄から聴かされていた通り、こやつまざまざと、わが目で見ねば信じ難いほどの業師――油断すれば、こちらが危うい。その上、もし討ち洩らして、やみやみ逃れられでもしたら、もはや、剣の師として、江戸で標札が上げられぬことにもなろう――どうしても、斬ッてしまわねば――

個人としては、雪之丞に、何の恩怨もない彼等だが、不届きな芸人を、さんざんに、剣の先きでもてあそんだ末、試し斬りも自由という、平馬の面白おかしい誘引に乗って、ここまで来てしまった彼等、いのち賭けの仕事と、はじめて思い知って、みんな、唇の色が変った。

だが、それだけ、殺気が充実して、すべての面上、必殺の凄味があふれる。

それを見のがす雪之丞ではない。しかし、却って、やっとのことで、張合いが出て来たというように、

「おお、いよいよ、御一同、抜かれましたな――が、辻斬りで、年寄り子供を斬るとは、ちがって、お手向いいたす敵手となると、お気おくれがなさるようで――」