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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
たあとの瘤、あそこへ中て見ましょうね――」
雪之丞はじめ、平馬も、手負いも、お初の能弁に魅されたように目をみはって、じっと、手元と的を見比べる。
お初は、小さな武器を、掌に躍らすようにして、持ち直すと、裾を乱し、緋いいろをこぼして佇んだまま、片肌ぬぎの無造作さで、短銃を掴んだ手を、前に出して、片目を押さえて、狙いをつける。
「いいかい? 射って見せますよ」
たのしげにいって、曳金にかけた細い指に、かそかに力を加える。
と、だしぬけに、
――ズーン――
と、いう、あまり高からぬ、が不気味なひびき――銃口から赤い火がパッとほとばしって、青白い煙が交ったと思ったが、的に集まった、目という目が、一どきに驚愕の色を漲らした。
薄暗さの中にかすかに見える、木瘤、小さな瘤の真ン中に、たしかにプスリと弾丸が突き刺さったのだ。
一六
「ね、どう? ちょいと、あざやかな技倆でしょう? 門倉さん、それからみなさん方――」
と、お初は、得意げに笑って、
「ことさら、雪さん、この隠し芸には、幾らかびっくりしたでしょうね? どう?」
と、いったときいつか、彼女は短銃を、じーっと雪之丞その人に狙いをつけているのだった。