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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

――もしや、もう、お初の奴が、何か小細工をやりはじめたのじゃあねえか知ら? いかに素早い奴でも昨夜の今日では、意趣がえしの法もつくめえが――

もっとも、お客と、ちょいと付き合って、じきに戻ると、男衆を通じてことづてもあったことだ――もう少し、辛抱して見ようと、心を強いて落ちつけて見もしたが、自分が待っているということを、忘れるような相手ではないので、あまりに時刻が経つと、気が気でなくなるばかり――

階下の小部屋に泊っている男衆を呼んで、呼ばれた先きは、どこだ? ――と、たずねると、客は広海屋で、茶屋は、柳ばしのろ半だという答――

「じゃあ、まち切れねえから、こっちからろ半へ出かけて見ましょう――入れちがいになったら若親方に、寝ずに待っているように言って下さい――すぐ引っかえして来ますから――ぜひに今夜中、話して置きたいことがあるのでしてネ」

彼は、男衆にそう頼んで、辻かごで、柳ばしへ急がせて行った。

二

初冬ながらも、涸れもせず、恒にかわらぬ、漫々たる夜の大川を、見渡す、料亭ろ半の門を潜って、今夜は、広海屋の一座は、顔をも姿をも見せぬ――と、いうことを、帳場からハッキリと聴いたとき、闇太郎は、今迄の胸さわぎを、まさかと抑えていたのが、現実となって、思わず、