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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

――だが、あまた手下を集めての仕事としたら、高が知れたものだのに――あいつは、いかに狡狐でも、女の身で、立派な仲間も子分も持っていねえ、またどんな同類が、百人あつまったところで、雪之丞に敵いッこはねえのだが――して見ると、いよいよ、雪之丞の大敵の方へ内通しやがったか!

闇太郎は、そうした場合の、雪之丞の胸の中を思うと、腸が千切れそうだ。

――折角、十何年、一心不乱に、父御、母御、一家一門のかたきが討ちてえばっかりに、肝胆を砕き、苦艱をかさねて来たあの人が、いよいよという瀬戸際に、つまりもしねえ女泥棒風情の、恋のうらみから、底を割られ、剣の山に追い上げられたら――それこそ、死んでも死に切れめえ! もし、そんなことがあったら、此の世に、神も仏もねえというもんだ。畜生! 万一、そんな場合にゃあ、この闇太郎、あの友達の恨みをついで、百倍千倍にして、仕けえしをしてやるから――この大江戸を火の海にだってしてやるから――

闇太郎は、沸き立つ憤怒にわけのわからぬことを、叫び立てそうになって、辛うじて自分を抑えた。

――馬鹿! 貴さまが、あわてふためく時じゃあねえ――心をしずめて、何とかひとつ方便をめぐらさねえことにゃあ――