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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
こん、こん、小石は
罪のいし。
つん、つん、積った
罪とがの
数だけは積まねば
ならぬ石。
永劫のつきせぬ
この責苦、
こん、こん、小石は罪のいし。
何となく、可哀そうになって、つい、うしろに近づいて、何かいいかけようとすると、子供の方で振り返ってニーッと笑ったが、その顔が、盗んで、遣り捨てにした、広海屋の赤んぼう――
――やあ、おのれ! 迷い出て、恨みをいうか!
と、睨めつけようとした途端、その子供の顔面が、急に、妙に歪んで、ぐたぐたと、伸び皺ばんだと思うと、浅間しく、ねじくれた、黄色い老人の顔――
――見たような? どこかで、いつか? 遠い昔――
と、考えをまとめかけた刹那、思いがけなく、その顔が、もぐもぐと、土気いろの唇をうごかして、
――久しいのう、三郎兵衛――
と、いいかけたようだ。
長崎屋、そのとき、ハッと思い当って、両手で顔を蔽くそうと、もがいたが、手足が緊縛されて、それさえならぬ。
二〇
赤ん坊の顔と思ったのが、見る見る変って、伸び歪んで、世にも苦痛に充ちた老人のそれとなった、その夢裡の変化が、両手で面を蔽くして、恐怖に五体がすくみ、声を出すことも出来ぬ長崎屋を、嘲けるが如く、追いかけて、呟くのだった。