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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「ほ、ほ、ほ、さぞびっくりなされましたろうが、実は、今夜、米屋のぶちこわしとやらがあると承り、物ずきに、現場を見とうなり、わざと、こうしたなりをして、駆けつけましたが、いやもう恐ろしい大騒ぎ、胆も身に添わぬ気がしましたので、すぐに、戻ろうとしますと、道ばたに、捨子――寒さに、泣くこえが、あわれでなりませぬで、拾い上げてまいりました。ね、かわいい子でござりましょう」

「まあ、では捨子で――こんなに、やわらかい寝巻を着せていながら、どうしたわけで、道ばたなぞへ――まあ、ほんとうにかわいらしい――抱かせて下さいましな」

子無しゆえに、一そう子煩悩らしい内儀が、手をさしのべて抱き取ると、赤子は、夢を破られて、むずかって、おぎゃおぎゃ泣き出すのだった。

雪之丞は、内儀に、乳母の世話をたのんでホッとした。

歎ける美女

一

――わたしは嫌われてしまった! わたしはあざむかれていた! いのち懸けの恋――燃えつきる恋――万人の女が、夢みながら、思い切ってそこまでは誰もつきつめぬ恋――親も、家も、わが身もすべて捧げた恋――恥かしい恋――苦しい恋――わたしの恋は、蹂み躪られてしまった! あのお方に取って、魂を焼き焦すほどのわたしの想いは、何でもなかったのだ。