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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「めおとごっこ?」
めおと――と、いう言葉が、十五の少女にも、ある恥かしさを、感じさせたと見えて、これも顔を紅くした。
「ほ、ほ、何でもないの――只、わたしの言うことに、あいあいと、返事をしてくれれば、それでいいのだから――してくれるわねえ――あそんでくれるわねえ――何でも好きな御褒美をそなたの――ほしいものを上げるから」
こむすめはうなずいた――千世は、いつもいつも淋しげな、はかなげな浪路を、どうにかして、慰めてやりたいと、若いこころにも、思っていたのだった。
「でも、うまく出来ますかしら?」
「出来ますとも――」
頼りない身には、主も、家来もなかった。浪路は、まるで、親友に対するように、千世に頼んだ。
「出来るから、今、いうとおり、わたしの言葉に、あいあいと、そういってくれるのですよ」
「はい」
「では、はじめます――いいこと? 何でも、出来るだけ、男らしく、だけど、やさしく返事をしてくれるのですよ――お前が、旦那さまなのだから――」
そう言って、浪路は、小むすめの肩に、藤いろの小袖の袂をかけて、抱き寄せるようにして、
「まあ、そなたは、こんなに長う、お目にかからなんだわたしを、可哀そうとは、お思いになりませなんだのかえ? 雪どの、さ、何とか、返事をしてたも――」