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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「お騒ぎでない。かの者、不忠、不所存きわまるによって、誅戮いたしたまででござる。そなたを、どういたそう? 何で、危害を加えましょう? ま、落ちつきなさい」
「お、は、な、し――」
浪路は、無宙に、身をもがいた。
無宙ではあったが、女性の本能が、彼女にある切羽つまったものを感じさせたのだ。彼女は、血刀を提げた男性の、腕の中に抱かれて、何もかも、奥深い秘密を察知したのだ。
「お、は、な、し――」
「これほど申すに――」
と、五助の声が、荒っぽく喘いだ。
一二
横山五助が、心の中の暗い願望を、それと口に出さぬうち、早くも、感づいた浪路は、放して――放して――と、腕の中にもがいたが、相手は、いっかな放さぬ。
ますます、却って、抱き擁める手に、力がはいるばかり――
「なにも、そのように、怖ろしがるには及ばぬ――かやつを、斬って退けたのは、むしろ、浪路どのそなたのためじゃ。そなたがこころを持ち直し、貴い格式にもどられたとき、うるそう噂をいたそうはこの輩、それゆえ、斬ってつかわしたばかり――何で、拙者、そなたに危害を加えよう――それよりも――」
と、いいかけて、乾ついた咽喉を、咳ばらいをして、