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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
正気の女性が、かくもすさまじく、かくも乱らがわしい瞳の色を見せるはずがないのである。
「そちたちも、わが身の手にかけて貰いたいかや! あの、憎らしい横山のように――」
彼女のうめきの怖ろしさ!
だが、あぶれものたちは、世にもまれな美女の色香に、酔い悶えて、言葉をはっきり聴きとることもしない。
「ひ、ひ、ひ――手にかけてくれるとおっしゃるのかね! こいつあたまらねえ――早く、手にかけて貰れえてえ――ひ、ひ、ひ、こいつあたまらねえ――」
と、為がしなだれかかろうとしたとき、婆さんが、燗酒を、自分も傾けながら、
「まあ、そんなに荒っぽくしなさんな――ねえさんは、上ずっているだけだあね――落ち着けば、正気になるかもしれねえ――」
と、制して、
「それより、もっと、ぐんぐんお飲りよ、楽しみは、ゆっくりあとにした方がたのしみだ。どうせあとで売物、壊しちゃあ駄目だ」
「いいや、そんなにしちゃあいられねえ――なあ、為」
と、丑――こやつ、欲情に目が据って来ている。
「そうともそうとも。婆さん、おめえ、只、飲んでいりゃあいいんだ。さあねえさん、あっちへいこう」
為と丑、相手がもがけばとて、叫ぼうとて、ためろう奴ではない――二人、左右から取りついて、腕をつかみ、胸を抱き、