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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

」

「ふ、ふ、ふ、ふ」

と、坊主は、大きな鼻の孔から、暴しのような息を吐き出したが、それが微笑なのだ。

「大した勢いだの? だが、兄いたち、まあ、夜よ中の、じたばたさわぎだけは止めて貰おうかい。何をしてもおらあ知らねえ――が、野ッ原もねえじゃなし、おれの寝ている部屋へ連れこまれちゃあこまるんだ。わかったか」

「何を!」

どんなものにも、したいことを妨げられるのが、一世一代の誇りを傷つけられるかのように思い込んで、いのち懸けになるのが、雲助、がえんの根性だ。

「この野郎――」

浪路を、為にあずけて、撲ってかかったが、振り上げたこぶしがとどかぬうち、手首を逆につかまれて、

「あ、い、て、て、て!」

「どうだ――かかるか――こう、雲助、この腕は、こうやりゃあ、おッぺしょれてしまうぞ!」

「い、て、て、て!」

と、丑はおめいたが、あやまりはせず、

「為、助けねえか――この坊主、叩き斬ッてしめえ――」

「よし、承知の助だ!」

ぐったりと、気を失ってしまっている浪路を、投げ出すように下に置くと、為、きょろきょろ見まわしたが、台所にはしり込んで、何か光るものをつかんで飛んでかえって、