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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「何の、この坊主、邪魔立てひろげやがって――」
と、わめくと、振りはらって、歯をかんで、又も、打ちかかってゆく。
為も、しがみついた。
「あれさ! 家の中であばれちゃあ、戸障子が、こわれるじゃあないか!」
と、お三婆は、立ちさわぎかけたが、その心配には及ばなかった。
「は、は、虫けらめ!」
と、法印、ニヤリとしたと思うと、左右から、撲りかかる二人の雲助の、耳たぶを両手で、ぐっとつかんだと思うと、
――ガツン!
と、思い切った、鉢合せ――
目から火が出たような気がしたが、脳髄がジーンと、打ち割れもしたように覚えて、そのまま、二人とも、グタリと、つぶれてしまった。
「死んだかい?」
と、眉をひそめるお三婆。
「なあに、死にあしねえよ――が、どこまでも、性懲りのねえ奴等だ――」
島抜け法印は、そう呟くと、面倒そうに、二人の雲助の帯際をつかんで、左右にひッさげて、のッしのッしと、出口まで歩いて、
「婆さん、戸をあけてくれ」
お三が、おずおずあけた戸のあわいから、――ズーン! とほうり出して、唾を吐きとばした。
「おととい、来い」
二一
美しい娘を、折角連れ込んで来てくれた、言わば、福の神のようにも思われる、丑、為、二人を、島抜け法印、襟髪つかんでほうり出すのを見たとき、お三婆は、物すごい目つきをした。