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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「さあ出かけよう――歩けねえなら、おれがしょって行ってやる――どこへ行きてえのか? ここにいちゃあ、ためにならねえ――」

「あの方のところへ――雪どののところへ――山ノ宿――」

と、かすかに浪路が、いったがまだ、気が乱れていると見えて、フラフラと立ち上って、

「あれ、放しゃ! 汚らわしい!」

「仕方がねえな――」

と、法印、困じ果ててつぶやいて、

「兎に角、その山ノ宿へ送ってやろう」

暗刃

一

ここは、浅草山ノ宿、雪之丞が宿の一間、冬の夜を、火桶をかこんで、美しい女がたと、ひそひそと物語っているのは、堅気一方、職人にしても、じみすぎる位の扮装をした象牙彫師の闇太郎――

「どッち道、いよいよ、枝葉の方は、おのずと枯れて来たわけだね」

と、闇太郎が、いっている。

「浜川の奴は、抜きも合わしねえで、何ものとも知れぬものに、殺されたというので、これは、土部の一味が、骨を折ったにも拘らず、多分、伜まで、取りつぶしになるだろうという事さ。いかにのん気な老中以下の役人どもとて、大凡、浜川たちのして来たことに、気がついているらしく、これを機会に、絶家させるのだろうといっているがね――」