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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「それもおッつけ――」

と、雪之丞、含笑ったが、その笑いが凄い。

「だが、やっぱし、油断がならぬのは、あのお初の奴と、門倉平馬だ――お初は、おめえが、今でも諦め切れねえから、感づいている大望についちゃあ、平馬にも洩らしてはいめえが、でも、あいつ、おめえを殺すか恋を叶えるか、二つに一つと、思いつめているんだから、油断はならねえ」

雪之丞は、白い顔を伏せる。

彼は、因果を感ぜざるを得ぬ――敵の娘の浪路の、いのちかけての狂恋――おたずねものの女賊の必死の恋――いずれも、あわれはあわれだが、どうにもならぬ成行きだ。

と、屋外で、深夜、暁闇のしずけさを破って、

――ドン、ドン、ドン、ドン!

と、旅宿の雨戸が鳴る。

ハッと、身を起し、耳をすました闇太郎、みじん、油断のならぬ身の上だ。

――ドン、ドン、ドン、ドン!

「何だ? 今時分?」

大賊は、囁いて、階下の容子に耳をそばだてた。

二

立ち上って、階下をのぞき下ろすように、耳をかたむけた闇太郎――

「何だって! 妙なことを言っているようだぞ」

と、つぶやいた。

つぶやいたも道理――まだ、起き出さぬ家人を、目ざまそうと、