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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
すると、屋外の、太いこえが――
「――でね、どうあっても、その、雪之丞という人に、今夜中にあわなけりゃあ、生きるの、死ぬのと、いうわけなので、おいらあ、ただ親切で、ここまでつれて来たのだが――」
「で、その女子という人のお名前は、おところは?」
と、闇太郎、すっかり職人になって、丁寧な口をきいている。
「そいつがわからねえんでね――実あ、おれの方も、途方に暮れていますのさ」
と、屋外。
闇太郎が、嗤うように、
「困りますねえ――そんな方を、よるよ中引ッぱッておいでなすっちゃあ――こちらは、役者渡世、そんなお人にかかわり合っていては、夜の目もろくろく合えませんよ。へい」
「何だって! じゃあ、おいらが、そのかわいそうな女子を、連れて来たのが、迷惑だっていうのかね!」
「まあ、そんなものでございます」
闇太郎が、こんなに言うのも、冗談沙汰ではないので――雪之丞にも、お初という、今は大敵のようなものがいる。その方から、どんないたずらを、仕掛けて来ないともわからないのだ。
屋外の声は怒った。
「何だと! 迷惑だと! 人でなし! てめえが、かわいそうな女のすがたを一目見たら――おい、てめえ、当人か、番頭か!」