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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

と、闇太郎の声は刺すようだ。

「あの女、手をかえ、品をかえやがって、さもしおらしい娘ッ子が、恋に狂って飛び込んで来たもののように装いやがったのだな! 馬鹿め!」

「冗、冗談じゃあねえ――親分――おらあ、あれから、あの女ッ子の行方をさがして、どうにかしておめえに詫びが入れてえと、夜の目も寝ずに、寒い寒い江戸の町を、それも、このおれが、大ッぴらにゃああるけねえおれが、ほッつきまわっている気持を知ってくれたら、おめえは、そんなにまで、いわねえだろうに――親分、そりゃあ、全く、思いちげえだ」

と、島抜け法印、泣かんばかりのオロオロ声だ。

「いいや、そんな泣きごとで、胡魔化そうとしたって駄目だ――思いもかけねえこの宿屋に、ちっとは骨のあるこの俺が居合せたんで胆を抜かれて、いい加減な出たら目で、人をだまそうとしやがるんだ――法印、悪どすぎるから俺の方でもゆるさねえぞ!」

「い、ち、ち――」

と、法印の盤台づらが、闇の中で歪むのだった。

「そんなに、腕をつかまねえでも、逃げやあしねえ、ゆるめてくれ――」

「弱虫め! ちっとも力なんぞ入れてやしねえ――その弱虫が、何でまた、あんな女ッ子とグルになって、おいらほどのものに煮湯を呑ませようとしやがったのだ! して、連れて来た、お初は、どこにいるんだ?」