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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
呪わしや。土部、浜川、横山――憎らしや、三郎兵衛、憎らしや、広海屋――生き果てて、早う見たい冥路の花の山。なれど、死ねぬ、死ねぬ。口惜しゅうて死ねぬ、いつまでつづくこの世の苦艱、焦熱地獄)――たしか、こんなものであろうな? お若いお方?」
サーッと、青ざめた若者は、口が利けなくなったように、土気いろの唇を、モガモガやったが、やっとの事で、
「あなたはどなた様? この私さえ、それを見るのが恐ろしゅうて、覗こうともせぬ、護り袋の秘文――狂うた父が、いつ気が静まった折に書きのこしたか、死後に遺っておりました文――それを、あなたが、まあ、どうして?」
と、吃り吃り身を震わせながら言うのを聴くと、編笠の中で、かすかな、乾いた笑いがきこえたようであった。
細長い指が、顎の紐を解くと、白髯ばかり見えていた、易者の面相が、すっかり現れる。
すっかり禿げ上った白髪を総髪に垂らして、額に年の波、鼻隆く、褪せた唇元に、和らぎのある、上品な、六十あまりの老人だ。
じーっと、穴のあくほど、みつめる女形。
老人の顔が、何とも言えず、懐しげな、やさしげな微笑の皺で充たされると、はじめて思い出したように、