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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
門口から、すぐに、かごに乗る、雪之丞、かごに引き添って、片褄を、ぐっとはしょって、走りだす、闇太郎、
「おい、若い衆たち、いそぐんだぜ。生き死にの病人が待っているんだ!」
「合点だ!」
またたく間に、山ノ宿から走せつけた、田圃の小家――
かごが着くと、肩をすくめるように、出迎えた法印――
闇太郎、いつになく囁くように、
「どうだ、病人は?」
一〇
しお垂れ切った顔をして、出迎えた法印を眺めて、闇太郎が、
「ど、どうした? 病人は?」
「それが、だんだん、もう、高い声も出さなくなってしまったんだ――おらあ、いつ息でも引き取るかと、一人で、心ぺえで、おっかなくってならなかったよ」
「おっかねえッて! 何をいってやがるんだ――さあ、雪さん、お上り」
男手で、それでも、温かい臥床に、横にしてやった、浪路、髷も、鬢も、崩れに崩れて、蝋のように、透きとおるばかり、血の気を失い、灯かげに背いて、目をつぶっていたが、どうやら、なるほどもう、死相を呈してしまったらしく、げっそりと、頬も顎も削けていた。
「なあ、かわいそうじゃねえか――公方さまの、寵姫とも言われたひとがよ――」
闇太郎は歎息した。