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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「よし来た――少し、重いが、背負って行こう――」
「まだ、すこし早いや――日が暮れてからの仕事にしねえと、おいらは大丈夫だが、おめえはブマだ――島抜けが通っているなんて、善悪ねえ岡ッ引きの目にでも触れちゃあならねえ――」
「大きにな」
悲しい、鬱陶しいことがあったあとなので、景気直しに、一口やって、ほのぼのとすると、もう、冬の日は、とっぷり暮れかける。
「いいころだ――出かけよう」
萌黄の風呂敷に、櫃をつつんで高々と背負った、一見寺男の、法印をしたがえて、闇太郎は、職人すがた、田圃のかくれ家を出て、さして行くのは、松枝町の、三斎屋敷。
隠宅ながら、見識ばった門番が迂散くさそうにするのに、二分にぎらせて、玄関にかかると、この関門は、なかなかむずかしい。
「いかなるものかは知れぬが、御隠居さまは、このごろ、ずうっと、御病気、お引きこもり――かまえて、来客をお受けなさらぬ。早う、かえりましょう」
「ところが、あッしの顔を、一目ごらんになりゃあ、御病人も屹度、よくなるんで――それにこの男にかつがせてまいった品を、どうしても、じきじきお渡ししなけりゃあなりませんし、そこを、どうか――」