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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「さあ、人目もない」

「御隠居」

と、闇太郎は、じろりと三斎老人を見上げて、いくらか、こえの調子が変って、

「人間、いつ、どんなものが手にはいらねえともかぎらねえんで――中身を御覧になって、びっくりなさらぬようおねげえいたしますぜ」

三斎の目口は、好奇の昂奮にわななき、物ほしげな微笑がただよった。

「闇、わしもこれで、六十年、天下の珍物を採集するに骨を折ってまいった。わしの蒐集品はまあ、どんな貴顕の宝蔵にも劣りはせぬつもりだ。大ていの品では、わしをおどろかすことは出来まいよ」

闇太郎はうなずいて、

「それはそうでしょうとも――御隠居さんの御宝蔵は、まだ拝見はしておりませんが、大凡の見当はついているんで――なかなか品えらみに、あっしも骨を折ったつもりですよ」

そう言いながら、縁側に置かれた、大きな風呂しき包の方へ近づいて、結び目をおもむろに解きはじめるのだった。

一八

闇太郎、浪路のなき骸を入れた唐櫃の蓋に手をかけたが、三斎隠居を見て、

「さあ、御隠居、立ち寄って、御覧が、願げえてえんで――」

「おお、大分、前口上のある品、定めて、目をおどろかす珍物であろうな?」