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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「う、うむ」

と、隠居は腕を組む。

闇太郎は、膝を立てて、

「じゃあ、たしかに、この唐櫃は、おとどけ致しやしたから、あッしは戻していただきますが、まあ早く、縁側から、お仏間へおうつしになった方が――」

「おお、闇、貴さまには、はからず世話になったのう」

と、隠居は目を上げて、

「実は、この死骸が、他人の手に落ち、公へ届け出しもいたされたら、当家として、とんだことになったところ――公儀からのおとがめも、おかげにて、事なく済むであろう。きさまには、礼もしたい。まず、客間に通って休息するよう――」

二〇

辞し去ろうとする闇太郎を、三斎老人は強いて引き止めて、

「いかに何でも、この唐櫃を届けてくれた仁を、このまま返すことは、わしには出来ぬことだ、それは、ようわかっていよう――さ、ずっと通るがよい――これ、誰か?」

と、手を拍つと、あらわれた二人の小姓に、

「客仁を、座敷に通し、酒飯の馳走をいたすように――まだ聴きたいこともある」

二人の小姓が、闇太郎を庭口から、離れめいた、小間の方へ、無理に導くのだ。

闇太郎は、振り切れずに、広からぬ瀟洒な部屋に坐る。

そこは、一切、茶がかった造りで、床の掛ものは、沈南蘋の花鳥、花生けは、宋窯の水の垂れるような青磁、磬が掛っていたが、その幅が二尺あまりもあって、そのいずれを見ても、闇太郎の