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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「連れは、拙者、知り合いの者だ」

と、言い残して、闇太郎を導いたのが、脇玄関。

「お遅いお訪ねでございますな」

と、顔見知りらしい若侍。平馬から、訝しい服装で、のっそりと後に立った、闇太郎へと、目を走らせる。

「遅なわって、相済まぬが、平馬折入ってお願いもござるし、且は、是非とも御目通りいたさせたい人間を拾いましたで、枉げて御面謁が願いたいと、仰せ入れ下さい」

若侍は、

「まだ、御寝にはなりません様子、とにかく御来訪、お伝えだけは、申上げることにいたしましょう」

と、奥にはいる。

闇太郎は、懐ろ手から、手こそ出したが、その両手を前でちょっきり結びにした、平絎の間に挟んで、じろじろとあたりを眺めまわすようにしながら、

「成る程、噂には聞いていたが、土部隠居。狭いが、豪勢な住み方をしていやあがるな。黄金の香が、ぷんぷんと、そこら中に渦を巻いていやあがる」

「これこれ、――つまらぬことを言うな」

と、平馬が流石に、あきれ顔だ。

「つまらぬことって、――門倉の旦那、あっしに取っちゃあ、この嗅ぎが、身上なんで――。こいつで、見当をつけねえ限り、他所さまの金蔵になんぞ、手がつけられるもんじゃござんせん」