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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「いや、因縁だな、応報だな」

と、闇太郎は、陰気くさくいったが、急にガラリと語調をかえて、

「そりゃあ、もう、悪事を働いた奴が、満足に畳の上で死ねねえのはあたりめえだ、浜川、横山、広海屋、長崎屋――おめえが狙うほどの奴が、手も下さねえのに、ひとりでに、他人の手で亡びて行ったのも、悪人の運勢が、尽きてしまった時が来たのだ。この分じゃあ、一ばんの強敵、三斎隠居だって、怖れるこたあねえ――一気に、どしどし成敗してやるがいい」

「はい、明夜は、あのあわれなお人のお身の上に、何か変事があったよし、駆けつけてまいったという口実で、たずねてまいるつもりでございます」

「それがいい、それがいい」

と、闇太郎はうなずいたが、

「しかし、用心はどんなにしても損はねえ――早まらず、しっかりさっし」

二人は、土蔵を出た。

しずかに、星の光が降って、天地はすっかり死の沈黙――二人は塀に近づいた。そして同時に手が壁にかかって、飛び越えの体構えになる。

二七

雪之丞、闇太郎、二人とも身は羽根よりも軽いことゆえ、片手が、壁にかかったと思うと、まるで釣り上げられるように、フワリと、土蔵の上に体が浮く。