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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
少し癇が立っているのだから――」
と、それに、そそられたように、一条の白光が、群れの中ほどでひらめいて、黒衣の一人が、ピュッと、大刀を振り込んで来るのだった。
二八
「なア、太夫、遠慮はいらねえよ、今夜こそ、毒虫を征討しようぜ」
「あい。わかりました」
うなずき合った、雪之丞、闇太郎――二人の手のうちに、今は、ギラリと小さく白く光る匕首――
その匕首のきらめきに、吸いつけられたように、よって来るのが飛んで火に入る虫のような、門倉平馬部下の剣士たちだ。
「たっ!」
「とう!」
と、四方から隙間もなく斬ってかかるので、こちらの二人も、いつか背がはなれて、自由なかけ引き。
引きつけて、突き、退がりながら、斬り揮う短刀に無駄がなく、またたく間に、その場に倒れてしまわぬものは、いのちからがら逃げのびて、河岸にへたばって、呻いている。
「さあ、出て来い。隠れん坊は、もう沢山だぞ!」
闇太郎は意気軒昂、てっきり、そこに伏せ勢があると認めた、河岸小屋の方へ呼びかけた。
のそりとそこから出て来たのは、黒覆面、黒衣ながら、からだの恰好で、一目に、平馬とわかる男――左右に二人の部下をつれている。