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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

だから謝ったわけじゃ。ゆるせよ」

そういうと彼は、草履をはいて、ふいに庭へ出て行った。何しに? と見ていると、寺院の庭の巨きな海棠の木に繋いであった一頭の黒駒のそばへ立ち寄り、自身、口輪をつかんで、広間の正面まで曳いて来た。

「良い馬であろうが、官兵衛」

官兵衛は縁まで出て、頭を低め、また両手をついて、

「栗毛でございますな。毛艶のよさ、脚、艫(馬臀)、肩との均整、蹄爪の鋭さ。わけて眸が静かです。近頃見たこともないご名馬。十歳にも相なりますかな」

「いやまだ若馬じゃよ。七歳馬だ。先ゆき長く乗れる。戦陣の中を、乗りこなしたらなお良くなろうと思う。……どうだ、欲しくないか」

「欲しいと思います」

「それならお汝にくれよう……実はこのたびの西下に、信長公から拝領して、これに打乗り、初めてこの陣営に繋いだので、書写山と名づけて可愛がっていたが、秀吉の勲功は、大半はお汝の働きによると申してもよい。――官兵衛、降りて来て、手綱を把ってみい、何とも美しい歩様をなす馬だぞ」

「ありがとうございまする」

庭上に降りて来て、官兵衛は地にひざまずいて手綱をうけた。そして一巡、乗らずに引き廻して見ていたが、三嘆して、